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2017年03月17日

「自主避難者」への住宅無償提供の打ち切り、東京都の住宅支援策についてまとめ

福島原発の事故により福島県内の避難指示区域以外から避難してきた、いわゆる「自主避難者」には
定期的な金銭補助はなく、住宅の無償提供が唯一の支援でしたが、2017年3月いっぱいをもって
この住宅無償提供が打ち切られることとなっています。
福島県の県外避難者への対応、東京都の支援についての要点を以下にまとめました。

【福島県の県外避難者への対応】
・災害救助法に基づいて民間住宅や国家公務員宿舎などを「みなし仮設住宅」として自主避難者にも
無償提供してきたが、「県内での生活環境が整いつつある」として2017年3月末で打ち切り。
4月以降は、
@民間賃貸住宅で避難を続ける場合、入居の初期費用10万円を補助し、家賃の一部を2年間助成する。
A2017年3月末までに福島県に帰還すれば、転居費(最大10万円)を補助する。
B避難先で公営住宅に住む場合は補助はない。

【東京都の住宅支援策】
東京都は、住宅の打ち切り対象の避難者が717世帯と最多。
1)都営住宅の優先入居枠300戸を設け、募集を行った。(2016年7/20〜8/3に200戸、9/28〜10/11に100戸)
・世帯要件、所得要件(上限額)などが細かく設定されており、要件を満たした応募数が196世帯のみ。
 対象世帯は@ひとり親世帯、A高齢者世帯、B心身障害者世帯、C多子世帯、
 D特に所得の低い一般世帯、E小さな子どものいる世帯、のいずれか。
・UR 住宅・雇用促進住宅・区市町村営住宅の避難者は優先枠対象から外されている。
2)2017年に入り、JKK東京(東京都住宅供給公社)が2/10〜20、2/22〜3/10にかけて
自主避難世帯を対象にした公社住宅の入居者募集を行った(100戸)。収入要件(下限額)。
UR 住宅・雇用促進住宅・区市町村営住宅の避難者も含む。福島県の「家賃補助」の対象になる。
しかし、2度の募集を行ったものの、応募世帯は4世帯のみ。

都営住宅と公社住宅とで条件は異なるものの、その要件は多くの「自主避難者」にとって厳しく、
東京都の住宅支援は、多くの人には届かない、不十分なものであることがわかります。
また、福島県の対応は、完全に「復興」のシナリオありきで、避難者に帰還を強要する形です。
(2017年3月までに戻らなければ補助が出ない、という時間制限まで設けています)
原発事故はいまだ収束のめどが立たない状態であり、現在も放射線量が他の地域に比べて高いこと、
20mSvに被曝上限が引き上げられたままであることなどの問題は無視されています。
避難を続ける場合も、補助が出る世帯と出ない世帯との分断が生じる懸念があります。
やはり住宅の無償提供の継続こそが必要であるといえるでしょう。

震災から6年。「自主避難者」の置かれている状況は、必ずしも楽にはなってはいません。
フリージャーナリストの吉田千亜さんの「ルポ母子避難―消されゆく原発事故被害者」(岩波新書)
は、こうした「自主避難者」の抱える多層的な困苦を伝える名著です。昨年2月に発行された本ですが、ここで書かれている内容の多くは、現在進行形の問題として続いています。
経済的な困難のほか、地域内での分断、家族間の分断、避難先での差別など、精神的な被害についても具体的に記載されています。
そのなかで、省庁間で責任を押し付け合い、当事者不在のまま政策が決められていく姿や
避難者の実態把握の不十分さといった問題が浮き彫りになってきます。

2012年6月に成立した「原発事故子ども・被災者支援法」は、避難者の自己決定権や、
支援対象地域からの移動支援、移動先の住宅確保・就業支援、避難した子どもの学習支援などを
国の責任で講じることなどが掲げられた法律でした。しかしその後、こうした理念は骨抜きにされ、
避難者の帰還を前提とした自己責任の枠組みに回収されていきます。
本書ではこの過程についても克明に描かれていましたが、私は同法律のことをほとんど知らなかったため、
とても勉強になりました。

本書の根底にあるのは、そもそも誰も好き好んで避難したわけではないということです。
言葉の意味を正しく考えるなら、「自主避難者」という言葉自体が欺瞞なのです。
避難者を区別し、分断することは不合理だという強いメッセージが伝わってきます。

個人的に印象に残った一節を、最後にご紹介します。
『自主避難者たちは、避難の「正当性」や「合理性」を自身で説明しなければならない場面にたびたび立たされてきた。(中略)
「科学的根拠」や「正当性」を立証する責任が自主避難者に課され、その立場を理解してもらえない存在として、社会に投げ出されている。』(100ページ)
『まき散らされた放射性物質や、それに接する可能性がある子どもの健康影響を、「合理的に怖がれ」というのは、当事者にとっては理不尽きわまりない。怖さというのは本来、合理的に解明できないものに感じるものだ。』(101ページ)
posted by 東京反核医師の会 事務局 at 15:46| Comment(0) | 時事ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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